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「銀河 その星狩り」 アムレード SR-71

チェリッシュ・ギャラリー 内田善美 自選複製原画集 「少年たちの記憶」
その表紙の絵。

内田善美自選複製原画集表紙

表紙は原画からの一部。上半分。

内田善美自選複製原画集からアムレード

自選複製原画集の「少年たちの記憶」という題。
「たくさんの原画=記憶の全て」から、「幾人かの少年=数枚の原画」を選ぶ。
描き手である内田善美氏が過去の作品を振り返り、「少年」から成長していく、ある一時を切り取った、という感じだろうか、普通に考えると。


でも、「銀河 その星狩り」のアムレードの絵は、そうじゃない。
大人になることなく、戦闘で命を落とした少年アムレード。彼が更に大人になれば、そうなったであろう姿ではあるまいか。
「少年たちの記憶」の題の自選複製原画集。この原画は、描き下ろしの絵と思われる。今現在、他での初出についての情報は目にしたことがない。


アムレード16歳
(秋のおわりのピアニシモ129頁)

この時、アムレードは16歳か。
髪の長さは腰くらいかな。この髪の長さも、時間を表す手がかり。

アムレード17歳
(秋のおわりのピアニシモ130頁)

その1年後なら、17歳。それから間もなく、亡くなる。

表紙は、17歳の少年の姿とは思えない。
髪の一番長いものは、太ももで、「銀河 その星狩り」では、そんなに長いものはないと思う。


これとは別に、雑誌のピンナップでも少年とは思えない青年らしき二人の姿があるので、表紙も大人の姿だと思った。

オージンアムレード


「銀河 その星狩り」の話を知っていると、アムレードが「少年たちの記憶」の表紙を飾っている「重み」が増してくる。

ただ、ここ数年、作品を読み直していて、何か、私が全て受け止めてれていない気がしていた。
何かが欠けている。何かが作品の中にあるのに、それを私が理解しきれていない、という気持ちがあった。

複製原画集の中には説明文が1枚入っていた。

説明文


短い文章の中の単語たち。
戦略偵察機 。「ロッキードSR-71」 。怪異。黒の威容。「彼にも持たせたかったのに…」。

説明文拡大

ひっかかっていた。
軍用機名に会社名がつく違和感。

「威容」が、たかだか飛行機(戦略偵察機だけど)につく違和感。
いよう【威容】の意味 - goo国語辞書:
『人や建物のりっぱで威厳のあるようす。威勢のあるりっぱな姿。』

Wikipediaには、戦略偵察機SR-71が、「当時としては画期的なステルス性能を持っており」とあった。

アムレードに持たせたかったという、米軍の戦略偵察機「SR-71」の様な怪異な黒の威容。
この表現自体が、長すぎて違和感を感じてしまった。
説明用の限られる文字数の中で見ると、米軍の戦略偵察機「SR-71」の様な怪異な黒の威容がメインで、それを織り込むために前に単語、後ろに文をくっつけた、くらいの感じ。

モヤモヤしていた。

先日、NHKスペシャル「未解決事件 File.05 ロッキード事件」を見たところ、コレだと思った。
「黒いピーナッツ」という言葉を思い出す。賄賂の単位に、「ピーナッツ」を使っていたと記憶してたので、「黒の威容」がつながった。
機体の黒だけではない、他の「黒」。
「黒いピーナッツ」。その黒さ、異様さ。

民間航空機購入絡みではなく、捜査では明らかにできなかった、軍用機購入絡みの汚職。

ロッキード事件は1976年2月に発覚した汚職事件
1972年7月第1次田中内閣成立
1974年12月内閣総辞職
1975年4月ベトナム戦争

対潜哨戒機P3Cが100機、1兆円。
この軍用機購入絡みの汚職は、明らかにならなかった。


テレビ番組からの書き起こしを少し。
1976年2月
防衛庁が高度の政治判断などと表現。
PXL国産化の白紙撤回など説明。
それを深夜、異例の白紙撤回。

1977年、対潜哨戒機P3C正式導入。
購入し続け、これまで100機導入。総額1兆円を超える。

アメリカに次ぐ、世界第2位の保有国。
まもなくアメリカでは新型機に切り替わる。ゆえに、日本が世界最大の保有国になる。

1兆円と比べれば、30億は「わずかな額」だ。見返りが大きいから、賄賂を仕掛ける。

ロッキード L-1011 トライスター - Wikipedia:

ロッキード社が伝統的に星や星座など天文に由来する名称をつける

これもまた、驚いた。「民間航空機事業から撤退」なら、賄賂工作も軍用機の方と思えてくるし。

星狩りって、星って、命のことで、戦争による殺し合いってことだよね。

「銀河 その戦争」だけだと、何が行われているのか見えにくくなるもの。
「銀河、その戦争による殺し合い」
なんだか、急に殺伐としてくる。

銀河って、galaxyだけど、Galaxyでもあって、地球を含む太陽系のある銀河系の銀河か。

アメリカの軍事戦略が関係することを明かした、元国家安全保障担当補佐官リチャード・アレン。
軍用機購入を迫ったアメリカの狙いを言葉にした。

日本が我々の軍用機を購入すれば、私たちは懐を炒めることなく日本の金で我々の軍事力を増大することができます。加えて私たちが望んでいた日本の軍事的役割の強化にもつながるのです。


アメリカの砂漠地帯にある軍用機の墓場。
役目を終えた200機を超すP3Cが放置されている。


「あの事件は日本にはびこる”闇”のほんの端っこに過ぎない
――――――――――ただあれ以上は触れられない(元特捜検事)」

番組冒頭の言葉。

時効となれば、起訴することも出来ず、罪に問うことはできない。
明らかに出来るまで、時効を過ぎてまで捜査できるわけじゃない。

途中で終わった捜査。それが、少年のまま亡くなった、アムレードの大人の姿と重なった。
明らかにされることなく、消えたことが、解説文の戦略偵察機「ロッキードSR-71」(ステルス性能を持つ機体)と重なった。
きちんと「偵察」できなかったから、起訴できなかったのもあるかな。


1979年12月。
複製原画集発売
説明文拡大

本来は地を駆け、天翔け、光の中で戦い続けている。そんな<生きている少年>が佳いのです。ほんとに!


地を駆け、天翔け、戦うような作品が、幾つあっただろう。

戦い続けられなかったアムレード。それは、彼が殺されてしまったから。
戦い続けるということは、敵対する相手を殺し続けるということ。
そうすれば、<生きている少年>で、居続けることができた。

こうやって、短く書かれた文章の中の「言葉を展開」していくと、怖くなってきた。
「佳い」という単語も、「よい」と読むけど、「めでたい」意味合いがある言葉かと思う。
「めでたい」とは到底思えない意味を感じた後は、もう、私の考えすぎとは思えなくなった。

言葉に長けている内田善美さんだから、行間で表現していること、言葉の裏の意味もあるわけで。
それがあるから、それを見つけたいから、私は、ファンで居続けてる。

「行間」とは、「行」と「行」の「その間」。
「行」がキラキラ、フワフワ、カワイイもの、あるいは精緻な、目に見える、絵と言葉。
「間」は、目に見えないもの、言葉になっていないもの。目に見える作品となる前の「何か」、気持ち、考え、価値観など。

見えていないものを見る。
言葉になっていないものを読む。
見えてはいたが、本当の意味までは見落としていたものを見る。
読めてはいたが、活字しか見えていなかったものを読む。

でも、まだまだ、見えない。
またまだ、読めない。

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